
以前書いた記事の中でトラックドライバーの仕事には2つの側面があるとお話しました。一つは「トラックの運転」で、もう一つは「荷物の積み降ろしなどの作業」です。どちらもきちんとした研修を通して学習していければ、安全に業務を行うことができるようになれると思います。
ですから、安全運転のノウハウ、作業の流れや段取り、様々な装置の使い方、安全で効率の良い体の使い方等を知るベテランドライバーとの同乗研修はとても大切な時間です。
日頃からあまり車の運転をしない人などは特に大変だと思います。車の運転だけでなく、土地勘のない地域での道順や積み降ろしの作業全般など覚えるべきことは山ほどあります。
例を挙げればきりがありませんが、トラックドライバー未経験だった時の自分がどんなことに戸惑ったのかを注意点として列挙してみました。これらを念頭に置いて研修を受ければ、ある程度はポイントを押さえて仕事が覚えられるかなと思いました。
■トラックの運転の注意点
- 車両感覚(車幅、車高、車体の長さ)
- 死角の範囲
- 左右折時の内輪差やリアオーバーハング
- 車間距離の感覚
- 制動距離(車重や貨物量による)
- 高さ制限
- エアブレーキ(4t)
※リアオーバーハングとは、トラックの荷台のリアタイヤより後ろに張り出した部分のこと
■積み降ろしなどの作業面の注意点
- 荷物の取り扱い(積み方・降ろし方・体の使い方)
- 観音扉やテールゲートリフターの扱い
- カゴ車や台車の扱い
- ラッシングベルトやビームの扱い
全ての運送会社がしっかりと時間を割いて同乗研修をしてくれるようなら何の心配もいらないのですが、前にもお話した通り、残念ながらそのような企業ばかりではありません。
さて、これも私の経験が元になっている話なので「そういうこともあるのか」程度に知っておいてください。よく求人情報誌には「ドライバー未経験の方でも同乗研修をしっかりやるので安心!」みたいなことが書かれているのに、実際にはそうではないケースが少なからずあると感じています。
私が見た最悪のケースは、ある高齢(50代後半)の方でした。それまでトラック乗車の経験もなく力仕事もどちらかというと苦手なタイプに見えました。さて、彼のためにどれくらいの研修期間が設けられたと思いますか?
3日間でした。
たまたま同じ現場(扱う荷物の種類が違ったので同じ現場で偶然会った)で見かける機会がありました。彼が入社して丁度1週間が経過した頃でした。
その現場ではカゴ車で納品してから、前回の納品時に使った空のカゴ車を回収するというシンプルな仕事です。
トラックをバースにつけてから1回目の荷降ろしあたりまでを見かけた程度ですが、トラックの扱いもカゴ車やテールゲートリフターの扱いも危なっかしい印象でした。当日帰社したときに上司にそのことを話しましたが「人が足りないからなぁ」と一言。
そして、その2日後に彼はテールゲートリフターから荷物を落としてしまったと同僚から聞きました。幸いなことに怪我人がでることはありませんでした。
さらにその2日後に今度はテールゲートリフターから荷物と一緒に彼が落ちたという話を聞きました。背骨と脚を骨折する大事故でした。
その事故があった翌月からは別の職場での就業が既に決まっていたので、その後の詳細は分かりませんが、その彼は半年以上入院することになったこと、その後も仕事中の事故が何件か続いた結果、その運送会社に労働基準監督署の立ち入り調査があったことを元同僚から聞きました。
トラックの運転、荷物の積み降ろし、カゴ車等の扱い、テールゲートリフターの扱いなどなど仕事に慣れるにはそこそこの時間と経験を要します。最初の研修が本当に大事だと感じた出来事でした。